肝臓の疾患について
肝臓の疾患について
肝臓には、肝臓そのものから発生するがん、胆管から発生するがん、他の臓器のがんが肝臓に転移したものなど、さまざまな疾患があります。肝臓は、体に必要なタンパク質を作る、有害な物質を分解する、胆汁を作るなど、多くの重要な働きを担っている臓器です。
そのため、肝臓の病気を治療する際には、病変を治療することだけでなく、肝臓の機能をどのように保つかが非常に重要になります。特に手術を行う場合には、病変を確実に切除することと、手術後に残る肝臓が十分に働けることの両立が必要です。
当科では、肝細胞癌、肝内胆管癌、転移性肝腫瘍(大腸癌肝転移など)から良性腫瘍まで、患者さんお一人おひとりの病状に応じた治療方針を検討しています。各疾患の詳しい説明と当科の特色については、ページ下部のリンクからご覧ください。
肝臓の手術療法について
肝臓の手術では、病変を確実に切除することと、手術後に残る肝臓の機能を十分に保つことの両立が重要です。肝臓は再生能力を持つ臓器ですが、切除できる範囲には限界があり、背景に肝炎、肝硬変、脂肪肝などがある場合には、より慎重な評価が必要になります。
当科では、腫瘍の位置・大きさ・個数、血管や胆管との関係、肝臓以外への広がり、患者さんの全身状態を詳しく評価し、安全で根治性の高い手術を検討します。また、血液検査や画像検査、肝予備能検査などを用いて、手術後に残る肝臓の量と機能を確認します。
肝切除では、病変を取り切ることだけでなく、正常な肝臓をできるだけ温存し、将来の治療選択肢を残すことも大切にしています。特に、肝細胞癌や転移性肝腫瘍では、治療後に再発した場合でも、再度の肝切除や局所治療を検討できることがあります。そのため、初回治療の時点から、長期的な治療方針を見据えて手術計画を立てます。
広い範囲の肝切除が必要な場合には、切除予定側の門脈を塞栓して残る予定の肝臓を大きくする「術前門脈塞栓術」を行い、より安全に肝切除を行えるよう準備することがあります。
手術のアプローチについては、当科の特色をご参照ください。
肝予備能の評価と切除範囲計画について
肝臓の手術では、病変を切除できるかどうかだけでなく、手術後に残る肝臓が十分に働けるかどうかを確認することが重要です。
「肝予備能」とは、タンパク質の合成や有害物質の解毒、胆汁の産生など、肝臓が正常に働いているかを示すものです。肝予備能とは、手術などで肝臓の一部を切除したあとに、残った肝臓が体を支えられるだけの「余力」がどれだけあるかを示すものです。
当科では、血液検査、画像検査、ICG検査などを組み合わせて、肝予備能を総合的に評価します。血液検査では、アルブミン(栄養状態や肝臓のタンパク合成能力を示す値)、ビリルビン(黄疸の指標)、プロトロンビン時間(血液が固まる力)などを確認します。
ICG検査では、ICGという無害な緑色の薬を注射し、肝臓がどれだけ速やかに処理できるかを調べます。この検査は、肝臓をどの範囲まで安全に切除できるかを判断するうえで重要な検査です。
また、肝細胞癌では慢性肝炎や肝硬変を背景に発症することが多いため、がんではない部分の肝臓がどの程度傷んでいるかを正確に把握することが特に重要です。肝内胆管癌や転移性肝腫瘍でも、広い範囲の肝切除が必要となる場合には、手術後に残る肝臓の量と機能を慎重に評価します。
必要に応じて、肝障害度やChild-Pugh分類などを用いて肝臓の状態を評価します。
肝障害度は、腹水の有無、血清ビリルビン値、血清アルブミン値、プロトロンビン活性値、ICG検査の結果をもとに、肝臓の障害の程度をA・B・Cの3段階で評価する方法です。Aが最も状態が良く、Cになるほど肝機能の低下が進んでいることを示します。
Child-Pugh分類は、腹水、肝性脳症(肝機能低下により意識障害が起こる状態)、血清ビリルビン値、血清アルブミン値、プロトロンビン時間を点数化し、A・B・Cの3クラスに分類する国際的に広く用いられる評価方法です。クラスAが最も肝機能が保たれており、クラスCになるほど重症であることを意味します。
これらの評価をもとに、どの範囲まで安全に肝臓を切除できるかを示す「肝予備能」が割り出されます。
肝予備能の評価と平行して、肝切除範囲のデザインも行います。当科では0.5mmスライスの高精細なDynamic CTの画像をもとに、全例にシミュレーションソフト「Vincent」を用いて精密な切除量・残肝Volumeの測定を行い、肝予備能の安全圏内で最も根治性の高い切除デザインを提案します。また、術前門脈塞栓術などの準備が必要か、手術以外の治療を選択すべきかを検討し、実際の手術中にもICGを行い、過不足のない肝切除を実現しています。
シミュレーションソフト「Vincent」を用いて精密な切除量・残肝Volumeの測定を行い(A, B)、ICG蛍光法まで活用した正確な離断ラインの同定(C, D)の写真です。
各疾患の詳しい説明
肝臓の疾患は、病気の種類によって検査方法や治療方針が異なります。以下の各ページでは、それぞれの疾患について、症状、診断方法、治療方針を詳しく説明しています。
当科の特色について
高難度手術から低侵襲手術まで。
肝臓・胆道・膵臓の病気に、患者さん一人ひとりに適した外科治療を。
当科では、開腹手術、腹腔鏡手術、ロボット支援下手術を病状に応じて適切に選択し、ICG蛍光法による腫瘍・胆管・血流の「見える化」や多診療科連携により、安全で精度の高い治療を目指しています。詳しくは当科の特色をご参照ください。
